抗精子抗体の検査と治療
Q:
結婚5年の妻35歳、夫40歳で、人工授精を7回受けましたが一度も妊娠しません。さらに、治療開始時の検査で陰性だった抗精子抗体が最近の検査で陽性と出ました。抗体が途中で陽性に変わることがありますか。それとも抗精子抗体はいくつか種類があるのでしょうか。
A:
治療開始時に行った抗精子抗体検査は、良好な精子に妻の血清を混合して精子の動きを悪くさせる「精子不動化抗体」の有無を調べるものです。2回目の検査は「精子結合抗体」が精子のどの部分(頭部・頸部・尾部・全体)に付着しているかを調べる精密な検査で、県内で実施しているのは当院だけです。
1回目の検査は精子が動いてさえいれば陰性と出ますが、実は動いている精子にも抗体が付着している場合があります。また、人工授精を繰り返して大量の精子が何度も体内に入ると、抗体ができやすくなります。
後天的に発生した抗体は治療が可能です。まず性交時はコンドームを着用し、抗原である精子を体内に入れないことで抗体の力を弱めます。さらに漢方薬の「柴苓湯(サイレイトウ)」とサプリメント「GABA」を服用すると、抗体の付着部位が尾部1カ所の場合1年間で80%が陰性になります。頭部・頸部を含む2カ所以上は20%以下と治癒率が低くなります。早く妊娠を希望するなら顕微授精が近道です。
フーナーテストが良好にもかかわらず長期間妊娠しない人や、人工授精を5回以上受けている人は高確率で抗体が存在するので、精子結合抗体検査を速やかに受けた方がよいでしょう。