不妊治療前の血液検査1
Q:
不妊歴1年の妻31歳、夫33歳で、不妊症の初診時に全身のあらゆる項目の血液検査をしました。なぜ全身の血液検査が必要なのですか。
A:
一般的な不妊治療前の血液検査では、前にお伝えした感染症や甲状腺異常の有無を調べるほか、肝機能や腎機能、脂質代謝、糖代謝、貧血、風疹抗体、子宮内膜症の有無などまで調べます。
特に不妊治療で問題なのが脂質(高コレステロールや高中性脂肪)と血糖の上昇です。脂質が増え肥満を招くと卵胞形成が不十分になるほか多嚢胞性卵巣症候群(PCO)傾向が強くなります。血糖が上昇すると卵子形成不全や卵子奇形が多くなり、PCO傾向も強くなります。
また、貧血は生殖器官全般に影響し胎児が育たなかったり流産の危険性が高くなります。いずれも重症なら不妊治療の前に、軽度なら同時に治療を進めます。
次に風疹抗体ですが、妊娠初期に風疹になると胎児の奇形が頻発するため、抗体が陰性ならワクチン接種をお勧めします。抗体がつくられる接種後2カ月間は避妊です。
子宮内膜症の有無は腫瘍マーカーで検査します。内膜症は自覚症状がないものから激痛や過多月経、血便、喀血を伴う場合があり、自覚症状がなくても不妊要素を生み出しかねません。現在は内膜症になりやすいかどうか、進行具合が予測できるので検査は重症化の予防にもなります。
不妊原因は生殖器官だけでなく脳の視床下部下垂体から脂質、糖代謝にまで関連するため、血液検査は一見不妊治療に関係ないようでも重要な意味があります。