抗精子抗体と抗リン脂質抗体
Q:
不妊歴1年の妻30歳、夫35歳で、初診の血液検査の結果、抗精子抗体と抗リン脂質抗体が陽性で体外受精しかないと言われました。さらに流産しやすい体質だそうです。いずれも治療法はないのですか。
A:
まず抗精子抗体が女性の体内に存在すると子宮に進入する精子の動きを止めたり死滅させたり、卵子への進入を妨げるなど精子を排除しようとします。そのため自然性交や人工授精での妊娠は困難で、精子が体内に進入するほど抗体の力は強まります。
1年~数年の間、性交時はコンドーム装着で精子が体内に入るのを防ぎ抗体の力を弱める対策もありますが、すぐに子どもが欲しい人や高齢で卵子の老化が心配な人は現実的に体外受精しかありません。
抗体の力が強度であれば顕微授精に進む場合もあり、ステロイドや漢方など薬物療法も満足した効果は得られていません。
次に抗リン脂質抗体は、体内に存在すると血栓が生じやすくなるため不育症(習慣性流産)に直結します。妊娠すると胎児に栄養を運ぶ毛細血管が無数にできますが、そこが詰まって栄養が行き届かないと流産しやすくなるのです。しかし、抗リン脂質抗体には治療法があります。
血栓予防のための抗凝固剤内服や自己注射が大きな効果をあげています。ですから初診時に抗体が見つかれば早く対処できるのであまり心配することはありません。
ただし、抗体は将来の狭心症や脳梗塞、下肢静脈瘤の原因になりかねませんので、普段からまめに水分補給してドロドロ血液にならないよう注意してください。