男性不妊症(精子精密検査)
Q:
不妊歴2年の妻33歳、夫36歳です。タイミング指導を経て人工授精を6回実施しましたが妊娠に至りません。妻の検査はすべて正常範囲で、夫の精液所見では精子数4,000万~6,000万(1ミリリットル中)、運動率40~60%、奇形率20~30%と自然妊娠は可能な数値だそうですが、なぜ妊娠できないのでしょうか。
A:
一般的に精液所見は400倍の顕微鏡下で精子数・前進運動率・奇形率を調べるもので、精子内部の状態までは分かりません。質問者様の精液所見は悪くありませんので、より高度なレベルで精子の詳細を調べる精子精密形態検査を受けてはいかがでしょうか。
精子は頭部・頸部・尾部で構成されそれぞれに役割があります。頭部は前頭部と後頭部に分かれ、前頭部は卵子に進入するための受精能力要素が詰まっており、後頭部は染色体があります。頸部は精子が卵子に向かって進むためのハンドルの役目があり生命を維持するミトコンドリアが含まれます。尾部は精子の運動をつかさどります。
精密検査ではこれら染色体やミトコンドリアなど各機能の損傷などが詳細に解析されますので、結果により自然妊娠が可能なのか人工授精や体外受精、顕微授精が必要なのかが判断できます。また、顕微授精を行っても受精できないのか、異常受精になるのかも分かります。
異常受精は一般的に着床しないか流産しますが、染色体異常児の危険もあります。検査は5~7日の禁欲後の精子提出のみ。精査できる施設は国内に2カ所あり、県内では当院で申し込むことが可能です。