人工授精と抗精子抗体
Q:
不妊歴3年の妻29歳、夫41歳です。夫が精子減少・無力症で自然妊娠の可能性が極めて低いことから、人工授精を6回受けましたが妊娠に至りません。別の医院で再度不妊検査を受けたところ、抗精子抗体が妻に見つかり体外受精を勧められました。抗精子抗体とは何ですか。
A:
抗精子抗体は精子に対するアレルギーのようなもので、女性の血液や汗、涙など体液に出現し、精子の動きを止めたり死滅させたり、凝集(精子同士が絡まり死滅する)させます。
膣や子宮、卵管内の分泌液にも出現するため、抗体があると精子は卵子に到達するまでの間にほぼ死滅して受精に至りません。そのため体外受精が必要になります。また、抗体が強度の場合は顕微授精に進む場合もあり、発疹やけん怠感など軽度のアレルギー反応を起こす女性もいます。
抗体を持つ女性は40~50人に一人といわれ、抗体の有無は血液検査で分かります。しかし、一般的な検査では精度が低く、軽度の抗体は検出されませんので実際は10~20人に一人が抗体を持つといわれています。
さらに、人工授精で多量の精子を子宮内に注入し続けると(通常、自然性交で子宮内に進入する精子は1万~5万に対し人工授精では1,000万~1億)、抗体が陰性だった人でも新たに出現する危険があります。
当院では人工授精は4回までと考え、それ以上は体外受精を勧めています。他院を含め6回以上人工授精を実施している人には必ず抗体検査を実施します。
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