免疫抑制剤による妊娠力アップ(1)
免疫抑制剤 着床 について
Q:
妻37歳、夫41歳で不妊治療歴は6年です。体外受精、顕微授精を合計10回以上行い、化学的妊娠3回、稽留流産を1回経験しましたが、生児は得られていません。不育症専門の医療機関で精査しましたが異常はなく、主治医には着床障害の有無が分からず、調べようがないと言われました。最近、ネットなどでよく見る免疫性着床障害に当てはまるのでしょうか。この障害について教えてください。
A:
免疫機能は、細菌(ウイルス)などの侵入物を抹殺したり、さらなる侵入物に対して抗体を作って体を守る大切な働きです。そのため免疫力が低下すれば、病気になりやすくなります。免疫には細胞性と液性の2種類があり、お互いにバランスを取りながら働いています。
細胞性免疫(Th1)÷液性免疫(Th2)(免疫比)の正常値は8〜12で、血液検査で調べられます。数値が大きくなれば移植胚などに対する拒絶力は大きくなり、特に10.3以上になると移植胚は拒絶されます。特に妊娠にはTh2細胞の優位性を確立するために不可欠です。このTh1/Th2比を低下させるためには免疫抑制剤である「タクロリムス」を使用します。タクロリムスは免疫抑制薬の1つであり、臓器移植の分野で広く使用されています。胚の半分はご主人の遺伝子が含まれるため、移植胚を異物と判断し拒絶反応を起こし胚が着床しないことがあります。これを防ぐには細胞性免疫(Th1)を下げ液性免疫(Th2)を優位にする必要があります。タクロリムス以外には、ビタミンDも免疫系に作用しTh1/Th2を下げる効果があると考えられております。
このように免疫はバランスが大切です。免疫比が高値で胚の拒絶を起こす場合は免疫抑制剤を使いますが、月経周期に合わせて投与量を増減するなど、主治医には知恵と経験が求められます。使い方を上手にコントロールできれば、妊娠率は上昇するでしょう。
参考文献:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/aji.13142
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