妊娠中に新型コロナウイルスに感染したら赤ちゃんに影響はありますか?
新型コロナウイルス 母子感染 についての質問がよくあるためお答えいたします。
垂直感染とは、母子感染とも呼ばれ、ウイルスなどの病原体が母親から子へ伝わる場合をいいます。胎盤を介した感染、分娩時の産道を介した感染、母乳を介した感染などが挙げられます。
では、実際に新型コロナウイルス、SARS-CoV-2(COVID-19)は垂直感染を起こすのでしょうか?
2020年5月までに発表された新型コロナウイルス(COVID-19)と妊娠における報告のまとめです。
報告をまとめると、新型コロナウイルス(COVID-19)感染妊婦が出産した936人の新生児のうち、27人の新生児が新型コロナウイルス(COVID-19)陽性であることがわかり、3.2%の割合で母子感染・垂直感染が起きることが示唆されています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7392880/
またこちらは2020年2-4月で妊娠後期に新型コロナウイルス(COVID-19)に感染した患者から出生した新生児の感染を調査した報告のまとめです。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7243472/
下記に報告されている論文の要約をご紹介します。
Ana Cristina Simões E Silva,Is SARS-CoV-2 Vertically Transmitted?:Front Pediatr. 2020 May 15;8:276. doi: 10.3389/fped.2020.00276. eCollection 2020. 表1一部改変
① Fan C他(2020/3) |
② Chen他(2020/3) |
③ Chen他(2020/5) |
④ Liu他(2020/2) |
⑤ Wang他(2020/7) |
⑥ Zeng他(2020/3) |
⑦ Dong他(2020/3) |
⑧ Li他(2020/2) |
⑨ Zhu他(2020/2) |
⑩ Chen他(2020/3) |
⑪Breslin他(2020/4) |
⑫Zeng他(2020/3)
https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/2763787 |
すべての症例報告では、母親の感染は妊娠後期に発生し、妊産婦死亡はなく、ほとんどの新生児は良好な臨床経過をたどり退院しています。2人の患者(Zhu他)を除いて、全員が帝王切開で分娩したため、分娩室の新生児と皮膚と皮膚の接触はありませんでした。これらの症例報告をまとめると、妊娠後期に感染した妊婦における新型コロナウイルス(COVID-19)の母子感染・垂直感染を積極的に疑う根拠となる報告はありませんでした。しかし新生児の抗体価IgMの上昇を認めた症例もあり、子宮内感染の可能性は否定できません。
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染メカニズム、生殖機能への影響についてはこちら