不妊治療におけるワクチン接種後の避妊期間はどれくらい必要ですか?
産婦人科診療ガイドライン2020年度版では,「妊娠中の生ワクチン接種はワクチンの含有するウイルスが胎児へ移行する危険性があり,原則は禁忌となる。ただし,生ワクチンが妊婦に対して接種,または生ワクチン接種後4週間以内に妊娠した場合でも,臨床的に有意な胎児リスクは上昇しないため,妊娠中断の適応にならない」とされています。
生ワクチンは添付文章では妊婦に対して使用禁忌とされていますが,いずれもヒトにおいては妊娠初期に使用された場合の胎児への影響(催奇形性や胎児毒性)は証明されておらず,これらの医薬品については妊娠初期のみに使用された場合,臨床的に有意な胎児への影響はないと判断してよいとされています。
不活化ワクチンはその有益性が危険性を上回ると判断された場合には摂取が可能です。
また,授乳婦に生ワクチンまたは不活化ワクチンを与えても,母乳の安全性に影響を与えないとされています。
https://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/rr6002a1.htm
これらのことから不活化ワクチンは不妊治療中に接種しても問題なく,また妊娠中も必要であれば受けることは問題ありません。
生ワクチンは接種後一定の避妊期間が必要となりますが,特に不妊治療開始後に検査し,接種が必要になるものとして風疹ワクチン(現在は風疹麻疹混合ワクチンが主流)が挙げられます。
風疹は抗体陰性または低抗体価妊婦(HI抗体価16倍未満)の場合には次回の妊娠における風疹罹患のリスク減少,および社会全体の抗体陽性率上昇に貢献する目的で産褥早期の風疹含有ワクチン接種が勧められています。
また,母乳中にワクチンウイルスが検出される場合があり,児に対して無症候性感染を起こすことがあります,臨床的に問題となることはありません。
成人男性および妊活開始前の女性に対しても,抗体検査や予防接種の機会を積極的に提供し,本邦においては女性についてはワクチン接種後2か月間の避妊を指導することとされています。ただし,風疹含有ワクチン接種後に妊娠が判明したり,避妊に失敗したりしても全世界的にこれまで風疹ワクチンによるCRSの報告はありません。
また,アメリカ疾病予防管理センター(CDC)では風疹ワクチン接種後の避妊期間は1か月としております。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4286306/
下記にCDCが提示する主なワクチン接種とその避妊期間を提示します。日本との違いとしては,風疹・水痘は2か月避妊を推奨していますが,アメリカでは1か月としています。
ワクチン | 種類 | 避妊期間 |
風疹・麻疹・ムンプス | 生ウイルス | 1か月 |
水痘 | 生ウイルス | 1か月 |
インフルエンザ | 不活化ワクチン | なし |
破傷風-ジフテリア-百日咳 | トキソイド | なし |
肺炎球菌 | 多価多糖類 | なし |
A型肝炎 | 不活化ワクチン | なし |
B型肝炎 | 不活化ワクチン | なし |
髄膜炎菌 | 多価多糖類 | なし |
https://www.fertstert.org/article/S0015-0282(06)01422-1/fulltext
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