現在判明している新型コロナウイルス感染による妊娠への影響とは
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が治まらず、現在も感染が蔓延している状況です。
世界的にはワクチン導入もあり今後はCOVID-19収束も期待されますが、まだまだ警戒が必要な状況であり、ニューノーマルな生活様式は続いていくと考えております。
現段階で改めて、日本を含め世界各国ではCOVID-19感染蔓延の中での妊娠や不妊治療についてどのような議論がなされているのでしょうか。
各国の妊娠と新型コロナウイルスに関する情報を抜粋し、ためになる記事をまとめてみましたのでご覧ください。(2021年1月6日時点の情報です。)
①CDC(疾病対策予防センター) より
2020年12月28日更新
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/your-health/index.html
現時点での知見に基づくと、妊娠中は、妊娠していない時期と比較してCOVID-19による重篤な病気や死亡のリスクが高くなります。さらに、COVID-19に感染している妊娠中の方は、早産などのリスクが高くなる可能性があります。
したがって妊婦は感染予防に努めるべきです。
下記は妊娠中および妊娠を考えている方は厳守すべきです。
・マスク着用
・ソーシャルディスタンス(6 feet)
・石鹸での手洗い20秒または60%以上のアルコールを含む手指消毒剤
★母体がCOVID-19に感染した場合の影響に関して
COVID-19は、妊娠中に児に感染した状態で生まれた新生児ではまれです。一部の新生児は、出生直後にCOVID-19陽性であるとテストされていますが、これらの新生児が出生前、出産中、出産後にウイルスに感染したかどうかは不明です。
COVID-19の検査で陽性となったほとんどの新生児は、軽度または全く症状が出現せず回復しました。しかし、重度のCOVID-19感染の新生児に関する報告がいくつかあります。また、母乳を介して乳児にCOVID-19感染が起きる可能性は低いです。
②本邦 厚生労働省より
日本の厚生労働省では新型コロナウイルスと妊娠に関する疑問にQ&A方式で回答しています。
「新型コロナウイルスに関するQ&A (一般の方向け)」
2020年12月24日更新
http://www.jsog.or.jp/news/pdf/20201225_kourousho.pdf
Q:妊婦が新型コロナウイルスに感染した場合、重症化しやすいですか。
A:妊娠中に新型コロナウイルスに感染しても、基礎疾患を持たない場合、その経過は同年代の妊娠していない女性と変わらないとされています。ただし、新型コロナウイルスに限らず、妊婦が呼吸器感染症にかかった場合には、妊娠していない時に比べ、特に妊娠後期において重症化する可能性があります。
Q:新型コロナウイルスに感染した場合、分娩方法は帝王切開となるのでしょうか。
A:これまで、分娩方式を帝王切開にすることで、分娩時の児への感染を予防できるという報告はありません。したがって現時点で COVID-19 感染と診断されたからといって、「帝王切開を行わなければならない」ということはありません。しかし、妊婦の全身状態などを考慮し、分娩時間の短縮が必要と判断される場合は帝王切開となる場合もあります
Q:妊娠中に母親が新型コロナウイルスに感染した場合、胎児にどのような影響がありますか。
A:子宮内で胎児が感染したことを示唆する報告も少数ながら存在しますが、新型コロナウイルスに感染した妊婦から胎児への感染はまれだと考えられています。 また、妊娠初期または中期に新型コロナウイルスに感染した場合に、ウイルスが原因で胎児に先天異常が引き起こされる可能性は低いとされています。 米国では妊娠中に妊婦が新型コロナウイルスに感染した場合、非感染の妊婦と比較して、早産になりやすいという報告もあります。
Q:母親が新型コロナウイルスに感染した場合、母乳や授乳を介して乳児が新型コロナウイルスに感染することはありますか。
A:母乳を介して新型コロナウイルスが乳児に感染するリスクは低いと考えられています。しかし、母乳中に検出されたとする報告もあります。また、授乳時には、接触・飛まつ感染のリスクがあります。従って母乳栄養を希望される際は、母乳を介した感染や接触・飛沫感染のリスクについて、ご家族や医療機関の医師等と十分に相談の上、授乳方法や時期をご判断ください。
③米国生殖医学会(ASRM)より
ASRMでも新型コロナウイルスと妊娠に関する疑問にQ&A方式で回答しています。
2020年4月9日時点発表
https://www.asrm.org/news-and-publications/news-and-research/announcements/FAQs-Related-to-COVID-19/
Q:COVID-19のため体外受精などは延期すべきですか?
A:治療の延期を検討することは難しい問題です。ASRMは不妊治療と生殖を本質的な権利として積極的に提唱していますが、COVID-19に感染した場合、健康にかなりのリスクがあります。ASRMはCOVID-19に感染するリスクを減らすために、危機が過ぎ去るまで不妊治療を延期することをお勧めします。
Q:妊娠していますがCOVID-19感染による影響はありますか?
A:現在入手可能な情報に基づくと、COVID-19に感染した妊婦はリスクが高いようには見えません。しかし、妊婦はインフルエンザやSARSなどの他の呼吸器ウイルス感染による重篤な合併症のリスクが高いことが知られています。そのため、妊娠中の女性はCOVID-19感染のリスクのある集団と見なされます。証拠は限られていますが、COVID-19に感染した妊婦が出産後に呼吸困難の悪化に遭遇した事例があります
④英国産婦人科学会(RCOG)より
RCOGでも新型コロナウイルスと妊娠に関する疑問にQ&A方式で回答しています。
2020年12月30日更新
Q:新型コロナウイルスは妊婦にどのような影響を及ぼしますか?
A:妊娠中の女性がコロナウイルスを発症した場合、他の健康な成人よりも深刻な体調不良になるリスクが高くないとされています。妊娠中の女性の大多数は、軽度または中等度の症状しか経験しません。
Q:新型コロナウイルス感染症と診断された場合、児にどのような影響を及ぼしますか?
A:これまでの報告ではCOVID-19に感染していたとしても、児の発育に問題を引き起こす可能性は低いことを示唆しています。妊娠初期のコロナウイルス感染が流産の可能性を高めることを示唆する証拠もありません。
Q:ビタミンDのサプリメントを摂るべきですか?
A:妊娠中のすべての女性には、ビタミンDの補給が推奨されます。ビタミンDのレベルが低い人は、コロナウイルスを発症すると深刻な呼吸器合併症のリスクが高くなるという報告がいくつかあります。しかし、ビタミンDの摂取がコロナウイルス感染を予防する、または効果的な治療法であることを示す十分な証拠はありません。
Q.妊娠中の女性はCOVID-19ワクチンを接種しますか?
A:妊娠中のCOVID-19ワクチンの日常的な使用を推奨するには証拠が不十分です。JCVI(Joint. Committee on. Vaccination and. Immunisation)(予防接種に関する共同委員会)は現在、リスクベースのアプローチを採用しており、臨床的に非常に脆弱であるという定義を満たす妊婦は、妊娠中にCOVID-19ワクチンを接種することを検討する必要があると述べています。
Q:授乳中の女性はCOVID-19ワクチンを接種しますか?
A:母乳育児中の女性に利用可能なCOVID-19ワクチンを与えることに既知のリスクはないと述べています。
Q:COVID-19ワクチンを接種した後、妊娠していることがわかった場合はどうなりますか?
A:最新のアドバイスでは、妊娠中の女性はワクチンを接種できると記載されており、妊娠しようとしている方はワクチン接種後に妊娠を避ける必要はありません。妊娠していることを知る前に、または妊娠中に意図せずにワクチンを接種した場合、ワクチンによる抗体産生に影響を与えることはなく、児へのリスクは低いので安心してください。
Q:新型コロナウイルスに感染している、または新型コロナウイルスに感染した可能性があると思われる場合はどうすればよいですか?
A:妊娠していて、高温の発熱または持続する咳、または嗅覚や味覚の異常がある場合は、10日間家にいる必要があります。新型コロナウイルスに感染している場合でも、症状がないか軽度の症状である可能性が高く、一定期間で完全に回復します。症状が悪化していると感じたり、改善していない場合は、特別なケアが必要であり、より重度の感染症を発症している可能性があります。
Q:母子感染は起きますか?
A:現在の文献的報告は、妊娠中または出産中に女性から児への感染(垂直感染)が発生することは稀であることを示唆しています。生まれたばかりの赤ちゃんがCOVID-19に感染するかどうかは、出産方法、摂食の選択、または女性と赤ちゃんが一緒にいるかどうかに影響されません。出生直後にコロナウイルスを発症した新生児のほとんどの報告例では、乳児以後は健康であったことを強調することが重要です。
新型コロナウイルスの発見から1年以上経過し、様々なCOVID-19と妊娠に関する報告が蓄積する中で、現段階ではまだ確実な根拠があるとは言えませんが、各国では下記知見について共通しています。
・妊娠中はCOVID-19感染が重症化しやすいということは現段階では言えないが、できる限り感染しないよう感染防止対策を徹底するべきである
・妊娠中のCOVID-19感染が児への感染につながるという確実な証拠はない
今後様々な報告が蓄積し、さらにCOVID-19と妊娠に関する情報が明らかになってくると予想できますが、まずは感染予防を徹底しましょう。
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