新型コロナウイルスワクチン接種後抗体価減少と3回目接種、流産リスク
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現在COVID-19患者は減少しており、ワクチン普及の効果が得られている状況です。
しかし、ワクチン2回接種後も抗体価は徐々に減少します。
横浜市立大学の研究によると、接種1〜3週後(抗体ピーク時)と比べ、6か月後の抗体価は約90%減少、中和抗体価は約80%減少します。
https://www.yokohama-cu.ac.jp/amedrc/news/202111ryo_vac6mnth.html
2021年10月には、先行接種をした医療従事者を対象とした抗体価減少とワクチン接種後のブレイクスルー感染の関連を調査した報告があり、抗体価減少とブレイクスルー感染は関連があるとされています。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2109072
したがって今後COVID-19ワクチンの3回目接種は必要になると考えられます。
世界中でワクチン接種が進み、データが蓄積したためCOVID-19ワクチン接種と流産リスクについて新たな報告が出てきています。
ワクチン3回目接種の前にCOVID-19ワクチン接種の妊娠初期での影響について解説します。
2021年9月に報告されたものでCDCのVaccine Safety Datalinkを元にした報告では2020年12月15日から6月28日までのデータで、自然流産したグループ(自然妊娠群)と、ある時点で継続妊娠しているグループ(継続妊娠群)を、自然妊娠あるいは継続妊娠していると判定した28日前にCOVID-19ワクチン接種を受けたかどうかで流産リスクが上がるのかを分析しました。
105446の症例のうち、13160の自然流産と92286の妊娠継続が確認されており、継続妊娠群の8.0%と自然流産群の8.6%が指標日の前28日以内にCOVID-19ワクチンを接種していました。
結果は、ワクチン接種で流産リスクは増加していませんでした。(調整オッズ比1.02; 95%CI 0.96-1.08)
使用されたワクチンはファイザーまたはモデルナですが、いずれも差はありませんでした。
つまり、COVID-19ワクチンの種類によらず、接種より28日(4週間)前後の妊娠では流産リスクは上昇しないと言えます。
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2784193
2021年10月にはCDCがv-safe Covid-19 vaccine pregnancy registryを利用して妊娠6週から20週未満までのCOVID-19ワクチン接種による自然流産の累積リスクを算出しました。結果は妊娠6週から20週未満までの自然流産の累積リスクは14.1%であり、妊娠初期に連絡がつかなくなった患者をすべて流産したと考えた場合でも妊娠6週から20週未満までの自然流産の累積リスクは18.8%でした。一般的な累積流産リスクと差がない結果になっています。
つまり、妊娠前または妊娠20週前にCOVID-19ワクチンを接種しても、一般の妊娠と比較して各週数で流産リスクが上昇することはないと言えます。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2113891
そして2021年11月に報告されたもので、ノルウェーでの妊娠した女性の登録情報を使用して、妊娠初期の妊娠とCOVID-19ワクチン接種に関するケースコントロール研究があります。
2021年2月15日から8月15日までに登録された妊婦(18477人)を、妊娠14週前に流産したグループ(自然流産群)と、妊娠初期に妊娠継続を確認したグループ(妊娠継続群)に分けて、ワクチン接種有無による流産リスクを比較しました。ワクチンの種類としてはファイザー、モデルナ、アストラゼネカいずれかを使用しました。
妊娠継続群の13,956人(うち5.5%がワクチン接種済み)と自然流産群4521人(うち5.1%がワクチン接種済み)のうち、ワクチン接種から流産または妊娠の確認までの日数の中央値は19日でした。
結果、ワクチン未接種を対照として比較した場合、ワクチン接種の調整オッズ比は、流産がワクチン接種3週間以内に起きた場合には0.91(95%CI 0.75–1.10)、5週間以内に起きた場合では0.81(95%CI 0.69–0.95)でした。
つまり、妊娠初期でワクチン接種の有無で流産リスクが増加するとは言えない結果でした。また、ワクチンの種類によっても流産リスクに差があるという結果はありませんでした。
これらの報告から、
・再感染拡大に備えてCOVID-19ワクチン3回目接種はおそらく必要になる
・COVID-19ワクチン接種は妊娠初期に行っても流産リスクは増加させない
・不妊治療中は副反応(発熱等)を考慮して接種タイミングを考えるべきではあるが、基本的に妊娠の有無や時期に関係なくCOVID-19ワクチン接種は可能
と言えます。
当院は新型コロナウイルスと不妊治療・妊娠の関係性などについても正しい情報を発信するよう心がけております。詳しくはお知らせ欄またはHP内の「Q&Aコーナー」をご参照ください。
・新型コロナウイルスのワクチンと妊娠について
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・新型コロナウイルスと性交について
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・新型コロナウイルスの変異株、ワクチンの有効性について
https://www.ivf-ibaraki.or.jp/20210523/4043.html
・新型コロナウイルスワクチンの種類について
https://www.ivf-ibaraki.or.jp/20210214/3963.html
・新型コロナウイルス感染と妊娠への影響について(各国情報のまとめ)
https://www.ivf-ibaraki.or.jp/20210419/4015.html
https://www.ivf-ibaraki.or.jp/20210106/3908.html
・新型コロナウイルス(COVID-19)感染メカニズムと生殖について
https://www.ivf-ibaraki.or.jp/20200516/3507.html
・妊娠中の新型コロナウイルス感染による影響について
https://www.ivf-ibaraki.or.jp/20200815/3660.html
・うがい薬と不妊についての関係
https://www.ivf-ibaraki.or.jp/20200805/3642.html
・紫外線による空気除菌での新型コロナウイルス対策について