不妊最大の敵「精子結合抗体」
Q:
不妊歴4年の37歳夫婦で、タイミング治療2年、人工授精1年を経て体外受精を2回実施しました。タイミングで1度妊娠しましたが、妊娠ホルモン(hcg)が上昇しただけの化学的妊娠でした。その後は妊娠に至らないため医師の言うまま治療を進めました。夫婦ともに検査に異常はありません。どんな不妊原因が考えられますか。
A:
当院では人工授精や体外受精を始める前に抗精子抗体(精子結合抗体)の存在を妻の採血で検査していますが、お済みでしょうか。
一般的に抗体は体内に多数存在し、ウイルスや細菌から身を守ってくれる(免疫機能)必要なものですが、人によって一部の異物に対し抗体が強く反応することがあります(拒否反応)。例えば花粉症や食物アレルギー、薬剤アレルギーなどです。
同じように精子に対して拒絶反応が起こる場合もあり(抗精子抗体)、精子の運動阻害、死滅化、卵子への進入妨害(受精障害)などを引き起こし不妊を招きます。
抗精子抗体は精子の頭部または頸部、尾部の各部位に付着し、精子全体に付着する場合は顕微授精しか方法はありません。
頭部・頸部近辺に付着する場合は体外受精での妊娠率は低く、尾部のみの付着だと体外受精も人工授精も望みがあります。従って、人工授精や体外受精などART(高度生殖補助医療)を考える場合は早期の検査をお薦めします。
治療歴5年以上の方の約7割に抗体が発見されており、治療は生活習慣の改善や薬で効果がみられる場合もあります。