精子の穴は今
Q:
精子形態検査により頭部に穴のある精子が多数見られ、顕微授精で妊娠を目指す場合は赤ちゃんに染色体異常が伴う可能性があるため慎重を要するとのことでした。その後、通院を休んでしまい1年半以上経ちます。やはり顕微授精を受けたいのですが、どの病院でも受けられますか。
A:
精子の穴は「精子頭部空胞」と言い、受精から妊娠、分娩後まで赤ちゃんに障害が出るかどうか世界中で議論されています。ある学者は受精や赤ちゃんに対して「何ら影響はなく、精子の穴は正常な人にも存在する」と主張しています。また別の学者は1970年より精子の穴は「不妊症に多大な影響を与えるだろう」と言い、その後の研究で「穴のある精子は精子の染色体が断裂している」と唱えています。従って、現在は穴の開いた精子で顕微授精してよいか賛否両論です。
精子頭部空胞の治療法は現段階ではありません。いずれにしても受精や受精卵の発達に何らかの影響を及ぼすことが考えられますので、顕微授精を受けるならできるだけ穴のない精子で実施したほうが良いでしょう。当院では受精可能な精子をピックアップする精子洗浄法を工夫し、穴のない精子を採取することができます。
時には穴のない精子が不良の場合もありますが、従来、健康な赤ちゃんを得た人には穴の開いた精子がありませんでした。どの病院でも精子洗浄法ができるとは限りませんし医師や胚培養士の認識や知識によっても差があり、物事はすべて大丈夫とはいえません。ですから、生殖医療は慎重であるべきです。